株について、むずかしい言葉をならべて説明してもアレなので、かんたんに考えるためにたとえ話をしたいと思います。
あるところにトムという、自分の会社を持ちたい、という人がいました。
その会社をつくるには1000万円必要です。
でもトムは200万円しかお金を持っていませんでした。一個人がそんなにお金を持ってるわけがありませんよね。
そこでトムは友人のジョンとマイケルと他多数にお金を借りることにしました。
トムは、彼らが口を揃えて、「ちゃんと返せよ」とうるさかったので、仕方なく代わりに「株券」というものをやりました。
楽勝!晴れてトムは自分の会社を持つことができたんだとさ。ちゃんちゃん
ちがいます。ここで終わったら「株」がなんなのか全然わからないじゃないですか。この話には恐ろしい続きがあるんです・・・・・・。
トムが作った会社は大成功!とまではいかないですがそこそこの利益を出していました。そこで、トムはお金を貸してくれた人達(株主)にお返しをしようと思いました。
ちょうど余っていたお金が12万円ありました。
最初、一人に10000円づつあげようと思っていましたが、それぞれ借りた額が違うということに気がつきました。
ジョンには200万、マイケルには100万、その他10人にはそれぞれ50万ずつ借りていました。
なのでトムは、ジョンに3万円、マイケルに1万5千円、その他にそれぞれ7500円づつあげることにしました。
■ はい、これが「配当」というやつです。もう少し続きます。
ジョンは配当がはいると派手に遊びまわりました。それはもう、すごくはじけちゃいました。すると、どこかでその話を聞きつけたデーブがジョンの家にやって来ました。
「オレにもそれをよこせよ」
ジョンは株券を4枚もっていたので、しぶしぶ1枚売ってやりました。
デーブが、「いくらだ?」と聞いてきたので、ジョンはちょっと考えて「60万だよ」といって株券を渡しました。
デーブは喜んで帰っていきました。
ラッキー!ジョンはほくそえみました。1枚50万で買った株券を60万で売ったので、10万円の儲けが出ました。
一方、マイケルのところにも、「株券がほしい」という人達が来ていました。
マイケルの持っている株券は2枚でしたが、欲しがっている人達の人数は5人でした。3枚足りません。
そこで、マイケルはこう言いました。
「1番高く買ってくれるやつにやるよ」
その言葉にいち早く反応したのはAでした。「30万でどうだ」
するとBが「40万だ」 今度はCが「オレなら60万で買うぞ」
ここで他の2人は早くも脱落しました。
その後も競り合いは続きます。
結局、株券はA、B、Cそれぞれに1枚づつ渡ることになりました。
値段はなんと80万円。マイケルはぼろ儲けです。100万円が241万5000円に化けたのです。
■ ここでちょっとブレイク。コーヒーでも飲んでゆっくりしてくださいな(笑)。
一年後。
トムは焦っていました。たくさんお金をかけて作った新商品が全く売れないで、在庫の山を築いていたのです。
とうとう経営がピンチに陥り、倒産寸前というところまで来てしまいました。
このままではまずいので、トムは、今後のことについてみんなの意見を聞こうと「株主総会」を開くことにしました。
しかし、そこにはとんでもない不幸が待ち受けていたのでした。
株主総会にはジョン、デーブ、その他株主が来ていました。
トムは現在の会社の経営状態について話しをしました。すると、みんなから思いもかけない言葉が返ってきたのです。
「経営状態が悪いのはトムのせいだ」「トムは遊び人」「ちゃんと配当だせ」
ひどいものです。トムは涙がこみ上げてきました。株主のためにまじめに働いていたのに・・・・・・。
そこにとどめの一撃がとんできました。
「トムは社長をやめろ!」
なんということでしょう! トムはがっくりうなだれました。そして冷たい涙がトムの頬をつたいました。
総会はそんなことは関係なしに進み、トムの解任の多数決をとることになりました。
株券1枚につき票は1票。
トムも4票もっていましたが、みんなの数にはかないませんでした。
トムの解任案。賛成 16票 反対 4票
「よって本案は可決されました」
トムはついに自分の会社を辞めさせられてしまいました。
いったい、彼はどうなってしまうのでしょうか?
なんか、恐ろしい、じゃなくて悲しいことになってしまいましたね…。
■ ここでちょっとおさらいをしましょう。
まず、「株式会社」と「株主」と「株券」ですが、これはいいですよね。
会社を作るときにたくさんの人から出資してもらいます。出資した人がその額に応じて「株券」をもらい、「株主」になります。そして「株式会社」ができます。
話のなかでは「貸した」となっていますが、厳密に言うとこれは返してもらえないんです。
「株主になる」ということは「その会社の持分を買う」、ということになります。つまり、その会社の何%かは自分のものになる、ということです。
そして、株主には特典があって、「配当」をもらえます。株券を多く持ってる人は、当然少ない人よりたくさん配当をもらえます。
たまに、配当以外にも「株主優待」という制度を実施している会社もあります。
最後に出てきた「株主総会」というのは、各会社で毎年実施しているものです。
僕は行ったことが無いのでよくわかりませんが、普通は議長の選出や取締役の選任の決議等を行うらしいです。これもまた、株券を多く持っている人の発言権が強いことになってます。
さて、それでは話の続きです。
自分の会社を追い出されたトムは、失意のあまり町を出て、隣の町をふらふらしていました。
すると、その町の広場にたくさんの人だかりができていました。
「何だろう?」と思いトムが近づいてみると、そこにいた1人の男がトムに言いました。
「あんたも株を買いにきたのかい?」
トムは驚きました。なんとその広場ではいろんな会社の株券が売買されていたのでした。興味を持ったトムはその男にくわしい話を聞きました。
なんでもその男の話では、今はもう会社に出資するのより株を売買するほうが流行りだということでした。
会社の経営状態により株の価値は上下するから、安いときに買って高いときに売ればそれだけで利益が出る、という話でした。
「なるほど。これは使えるぞ」
トムは早速自分の持っている株を売ることにしました。
トムの会社の経営状態が悪いことは、この町ではあまり知られていなかったことと、誰も持っていないめずらしい株だったことでトムの株には信じられない値段がつきました。
なんと1株100万円!トムは400万を手にすることができたのです。ちょっと詐欺的です。
トムはいつか社長に戻ってやる、という目標のもと株で稼ぐことにしました。
そして3ヶ月後。
トムの会社の経営状態の悪さが知れ渡り、トムの会社の「株価」は40万円まで値を下げていました。
ジョンもデーブも、配当がもらえない株を持っているのがいやで売りに出していましたが、なかなか買い手がつきません。
そこにトムが現れました。
「僕が買ってやるよ」
トムは1ヶ月間かけて株で稼いだお金で、ジョン、デーブ、その他の株12枚を480万円で買い取りました。
これで会社の権利は60%トムのものです。
トムは自分のつくった会社を取り戻し、大はしゃぎで自分の町にかえっていったんだとさ。
おしまい
かなり急展開になってしまいました(笑)。
簡単にまとめると、広場が「株式市場」といういろんな会社の株を買ったり売ったりできるところで、その、株を売買するということを「株式投資」といい、「株式投資」をする人達のことを「投資家」といいます。
僕たちはこの「投資家」ということになります。
さて、これで株というものがだいたい分かっていただけたと思います。
たとえ話を使いましたが、かえって分かりづらくなってしまったかも知れませんね(笑)。